父の万年筆

古き良きもの

父が大切に使用していた万年筆。
昔、父の書斎の机の上には、筆記具のトレーが置かれており、その中にはボールペンや鉛筆と共に『Mont Blanc121』の万年筆が並んでいました。父は今はリタイヤしていますが、サラリーマン時代には何やら良く机に向かって物を書いていました。

まだPCも存在しない時代で、タイプライターを使って文章を書いたり、手紙を書く時代でした。私の文房具への愛は、間違いなく父親譲りだと断言できます。
『Mont Blanc 121』は、1970年代に作られたものでペン先が18金でできているため、ペン先がしなるような感覚があります。ペン先には、「750」と刻印されています。万年筆の真ん中のオレンジの部分は透明に作られていて、インクの残量が分かるようになっているとか・・・。古い物なのでなかなか資料を見つけることが出来ませんでした。

父の書斎には、子供が触れてはいけない領域があり、私は子供ながらにその空気を読み取っていましたが、大人の文房具の領域にはとても興味がありました。ある日、父の留守時にこっそりと『Mont Blanc 121』を手に取り、試し書きをしました。

子供ながらにその時の万年筆の書き心地は、とても滑らかなでペン先が紙の上を滑っていくようでした。なにか特別な感覚を覚えたのを記憶しています。

それ以来、その万年筆には、触れることはなかったのですが、ある日、父の筆箱の中を開けるとあの時の万年筆が入っていました。もう随分昔の物だったので、取り出してみるとペン先にインクが固まっていて、インクの出口が塞がれているようでした。ネットで万年筆の洗い方を調べて恐る恐る洗浄を試みました。

しっかりと乾かしてからインクカートリッジを入れようと万年筆を二つに分解したところ、カートリッジを入れるところがありません…。すると父がインクボトルから吸い上げるタイプであることを教えてくれました。この万年筆は、分解した下の部分の先をインクボトルにつけながらお尻の部分を回わして本体にインクを吸い上げる仕組みになっています。インクの吸引方式は、『ピストンフィラー式』だそうで、ドイツの万年筆メーカー『Pelikan』が始まりとのこと。

あれから何年たつのでしょうか…。
ペンを取りいざ書いてみると、あの時のあの書き心地良さが蘇ってきました。

古くから伝わるアイテムなのに、なぜか簡単に滑らかな文字が書ける。これこそまさに職人の技なのでしょうか。新しい時代には新しい技術やアイデアをどんどん取り入れたいと考えていましたが、万年筆の世界に限らずカメラの世界でも、職人たちが精緻に製品を作り上げていく姿勢に感銘を受けました。その素晴らしさにあらためて心が揺さぶられました。
父から譲り受けたこの『Mont Blanc121』の万年筆は、毎日持ち歩くには、失くしてしまいそうでペンケースにしまっておこうかと思いましたが、使わないとまた劣化しそうなので、毎日の日記を書くための万年筆として使いたいと思います。

現在はヴィンテージなので入手困難な『Mont Blanc121』ですが現行のモンブラン万年筆は・・・やっぱりお高いですね^^;

女王の象徴が凝縮された逸品@@これは緊張して文字が全部ぶれてしまいそう・・・