プロローグ|旅は、一本のペンから始まった

ペンを一本、なくしてしまった。
ほんの些細な、けれど私にとってはちょっとだけ特別だったペン。学生時代に使っていた、黒インクのボールペンで、買った場所も正確な名前も忘れてしまったのに、握った感触だけはずっと手のひらに残っていて。
ふとした瞬間、そのペンのことを思い出すと、なぜか胸の奥がすうっと寂しくなる。
もしかしたら、あの頃の自分を探しているのかもしれない。だから、文房具に惹かれるのかな。ノートの余白、インクの香り、シャープペンのカチカチという音。文具はどれも、静かに語りかけてくるような気がする。
そんなある日、「また出会いたいな」と気持ちがはやる。
あのペンじゃなくてもいい。けれど、心がふと立ち止まるような、そんな文具に。
それでも、ふと考えた。
一人旅なんてしたことがない。計画も地図もほとんどない。でも、大好きな文具を探す旅なら、もしかしたら私にもできるかもしれない。
そう思ったら、心が少しだけ軽くなった。そして私は、一人旅に出ることにした。
地図も計画も、ほとんどない。ただ、文具を求めて、心の赴くままに歩いてみる旅。
文具は、使う人と出会って初めて物語を持つ。
この旅で出会う文房具たちも、きっと、何かを私に教えてくれるはずだ。

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
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